なぜ船の遅延は「常態化」したのか? 国際情勢から読み解くメカニズムと今後の見通し
- HP管理人

- 2月6日
- 読了時間: 6分
現在、日本・中国・ASEANを結ぶ「アジア域内航路」において、広範囲なスケジュール遅延が発生しております。
「最近、以前のような定時運航が守られない」
「急な抜港(寄港地の省略)で計画が狂う」
といったお悩みをお持ちのお客様も多いのではないでしょうか?
本コラムでは、なぜ特定の船会社に限らず、業界全体で遅延が常態化しているのか?
その構造的な原因と、2026年に向けた今後の見通しについて詳しく解説いたします。
1. 現在起きていること:業界全体への波及

現在発生している遅延は、特定の船会社のトラブルではありません。
国際的なアライアンス(提携)を組んで共同運航を行う海運業界全体において、以下の事象が連鎖的に発生しています。
スケジュールの不安定化
到着日が読めず、数日の遅れが常態化している。
ハブ港の混雑
シンガポールなどの主要港で、船が接岸できず沖待ちが発生。
抜港の増加
遅れを取り戻すために、予定していた寄港地をスキップするケースが頻発。
これらは一時的なトラブルではなく、国際物流を取り巻く「環境の激変」が主因です。
2. 原因の深掘り:遠い海の出来事が招く「玉突き事故」

アジアの海で起きている遅延の震源地は、実は遠く離れた「中東・欧州航路」にあります。一見無関係に見えるこの二つが、どのように影響し合っているのか、そのメカニズムを紐解きます。
Q1. そもそも「中東情勢」とは何を指すの?
物流の文脈で言う「中東情勢」とは、主に紅海(こうかい)周辺での商船への攻撃リスクを指します。
紅海は、アジアと欧州を最短で結ぶ「スエズ運河」への入り口です。
しかし、この地域の情勢不安(武装勢力による商船攻撃の脅威)により、多くの船会社が安全確保のため、ここを通るのを諦めざるを得ない状況が続いています。
Q2. 「紅海回避」でなぜ到着が不規則になる?
スエズ運河を通れない船は、アフリカ大陸の南端「喜望峰(きぼうほう)」をぐるりと回るルートに変更します。
距離の増加:
これにより、片道で約10日~2週間も航海期間が延びます。
スケジュールの崩壊
単に「遅くなる」だけではありません。
長距離移動による気象海象の影響や、給油地の混雑により、「毎週〇曜日に到着」という定時性が維持できなくなります。
その結果、ある週は船が来ず、翌週に3隻まとめて到着する、といった「団子運転」のような状態が発生します。
Q3. なぜそれが「アジア域内航路」に波及するの?
ここが最大のポイントです。
「欧州行きの船が遅れているなら、日本とアジアを結ぶ船には関係ないのでは?」
と思われるかもしれません。しかし、これらは「乗り換え」で繋がっています。
ハブ港での接続待ち(乗り換え失敗)
シンガポールなどの巨大なハブ港では、欧州からの大型船(母船)から、アジア各国へ向かう小型船(フィーダー船)への荷物の積み替えが行われます。
母船の到着が不規則になると、接続するフィーダー船の荷物は「待機する」という苦渋の決断を迫られます。
待機すれば、当然スケジュール全体が遅れ、限りある次船のスペース、港湾スペースを逼迫させます。
港のキャパシティ超過
遅れていた大型船が一度にまとめて到着すると、港は大混雑します。
すると、巻き添えを食う形で、無関係に見えるアジア域内船までもが「接岸待ち」の渋滞に巻き込まれてしまいます。
これが、遠い中東の情勢が、巡り巡って日本発着のアジア航路の遅延を引き起こしている「玉突き事故」のロジックです。
【徹底予測】
いつ「平常」に戻るのか? 今後の見通しを読み解く
「この遅延はいつまで続くのか?」
最も気にされている点かと思います。
結論から申し上げますと、「2026年中は、現在の『ゆとりを持ったスケジュール』が新しい標準(ニューノーマル)として定着する」可能性が高いと推察されます。
なぜ「すぐに元通り」にならないのか。その根拠を3つの視点から解説します。
1. 「復旧」には「混乱」の倍以上の時間がかかる
仮に明日、中東情勢が劇的に改善し、スエズ運河の通行が再開されたとしても物流はスイッチ一つで切り替えられません。
船の再配置(リポジショニング)の時間
現在、世界中の船が「アフリカ周り」の配置で動いています。
これをスエズ経由に戻すだけで数ヶ月かかります。
「復旧の渋滞」リスク
航路が正常化すると、遠回りをしていた船と、近道をした船が同時に主要港に殺到するタイミングが発生します。これにより、一時的に現在以上の激しい港湾混雑(ダンゴ運転)が発生するタイミングがあると考えます、安定稼働までには情勢安定化からさらに数か月程度の「調整期間」が必要となります。
2. 「船不足」の解消は道半ば
現在、各船会社は新造船(新しいコンテナ船)を次々に投入しています。
しかし、供給が増えてもスケジュールが引き締まらない理由があります。
距離が伸びれば、船が足りなくなる
アフリカ周りの航路は、スエズ経由に比べて航海距離が長いため、同じ週1便のサービスを維持するだけでも、通常より多くの船(隻数)が必要になります。
新造船は「穴埋め」に消える
投入された新造船の多くは、この「航路延長によって不足した分」を補うために消費されてしまいます。つまり、船は増えていますが、それは「マイナスをゼロに戻すための投入」であり、遅延を解消するほどの余剰パワーにはなりにくいのが現状です。
3. 「ジャスト・イン・タイム」から「ジャスト・イン・ケース」へ

港湾側(特にシンガポールなどのハブ港)も、現在の取扱量高止まりに対応すべく能力増強を急いでいますが、労働力不足などの構造的問題もあり、即効性は期待しづらい状況です。
そのため、物流業界全体の潮流として、
以前:「無駄を極限まで削ぎ落としたギリギリのスケジュール(Just in Time)」
今後: 「遅延を見越して在庫や納期にバッファを持たせる(Just in Case)」
へと、前提条件がシフトしていくと考えられます。
【まとめ】今後の対策として
残念ながら、「待っていれば数ヶ月で元に戻る」という状況ではありません。
2026年度の事業計画におかれましては、現在のリードタイム(通常+7日~10日程度)を「暫定的な標準」として設定いただくことが、サプライチェーンを守るための最も現実的な対策となります。
物流を取り巻く環境は、世界情勢等で大きく変わってきます。
「風が吹けば桶屋が、、、」
という様な事が頻発します。
その際にどのように情報を収集するか、それらを分析し今後の見通しを推論するパートナーとお仕事をする事が重要と考えています。
山口物流では富山からのコンテナ物流はもちろんの事、独自のネットワークで得たホットな情報を適宜お客様にご案内をしています。
本コラムを通じて、当社にご興味を持っていただけると嬉しいです。


