top of page

【独自解説】ホルムズ海峡封鎖の真実:すぐモノは無くならない「海上在庫」とは

  • 執筆者の写真: HP管理人
    HP管理人
  • 3月3日
  • 読了時間: 6分

2026年3月3日現在、中東情勢の緊迫化に伴い、ホルムズ海峡が「事実上の封鎖状態」にあるとの報道がなされています。

日本郵船、商船三井、川崎汽船といった国内海運大手も同海峡の航行を一時停止する措置を発表しており、私たち物流業界にとっても、また皆様のビジネスにとっても無視できない事態となっています。

物流の視点から、このニュースが日本に与える影響と、今後の見通しについて解説します。



約20年前にLNG船の機関士として何度もホルムズ海峡を通航しました。

その時に見たおびただしい数の船舶を鮮明に覚えています。

それらに乗船されている乗組員さんは、家族と何カ月も離れて今回のような危険にさらされていると思うと自分の事のようにそわそわします。

改めて、電気やガスを使う時に感謝の心を持とうと思いました。


1. 何が起きているのか?(2026年3月現在の状況)

2月末からの軍事的緊張の高まりを受け、中東の要衝であるホルムズ海峡

(一番短いところで約30㌔。富山駅から小矢部のアウトレットくらい)

の航行リスクが極限まで高まっています。 過去にも緊張が高まる局面はありましたが

今回のように主要な海運会社が「通れない(通らない)」判断を下す事態は、歴史的にも異例です。

2. すぐにモノがなくなる?物流のプロが伝える「3週間のタイムラグ」

「明日からガソリンがなくなるのでは?」

「今のうちに日用品を買いだめしておこうか」

と不安に感じる方も多いかもしれません。

しかし、国際物流の仕組みを正しく紐解けば、「即座にパニックに陥る必要は全くない」ことがわかります。ここで鍵となるのが、「海上在庫」という考え方です。


海の上は「巨大な動く備蓄基地」

中東のペルシャ湾から日本まで、原油や液化天然ガス(LNG)を積んだ大型タンカーは、約20日〜25日(約3週間)かけてゆっくりと海を渡ってきます。

これはつまり、日本と中東を結ぶ海の上には、常に3週間分のエネルギーを積んだ船が数珠つなぎになって向かっていることを意味します。


水道の長いホースをイメージしてみてください。

元栓(ホルムズ海峡)を急にギュッと閉めたとしても、すでにホースの中(海の上)にある水は、しばらくの間は出口(日本)から出続けます。


タイムラインで見る供給の真実

  • 【直近3週間】物理的な不足は起きない

    封鎖状態に陥る前に海峡を抜け、現在も海の上を航行している船はたくさんあります。これらの船が今後3週間かけて順次、日本の港に到着し続けます。したがって、明日あさって急にガソリンやエネルギーが枯渇することはありません。


  • 【3週間後以降】半年分以上の「備蓄」が出番を迎える

  • 海上の船が途絶えると、新たな輸入はいったんストップします。しかし、ここで日本の強力な防波堤である「備蓄」が機能します。日本には現在、国と民間を合わせて約200日分(半年以上)もの石油備蓄が存在しており、これが市場に放出されるため、直ちに生活が停止する事態は避けられます。


買いだめによる「物流パンク」こそが最大の敵

最も警戒しているのは、モノが輸入されなくなることそのものよりも、不安に駆られた人々による急激なパニック買い(買いだめ)です。

近年の感染症拡大時のマスク不足でも見られたように、「念のため多めに買っておこう」という行動が全国で一斉に起きると、末端の小売店からは一瞬で在庫が消えます。

これは本当の供給不足ではなく、「急激な需要の増加に、国内の配送網(トラック輸送など)が追いつかなくなる」ことで起きる人為的な欠品です。


まずは普段通りの行動を

ホルムズ海峡の問題は非常に重大ですが、この最初の3週間は、日本社会にとって国同士の交渉や代替ルートの確保を進めるための「猶予期間」でもあります。

慌てず普段通りの行動を心掛けましょう。


3. 「原油」と「LNG」で全く違う2つの危機:備蓄の壁と価格の高騰

「エネルギー危機」とひと括りにされがちですが、物流や産業への影響を正確に予測するには、「原油(石油)」と「LNG(液化天然ガス)」のリスクの違いを分けて考える必要があります。


結論から言うと、原油は「備蓄の壁」で耐えられますが、LNGは「価格高騰の直撃」を受けやすいという大きな違いがあります。


【原油(石油)】

中東依存度95%の弱点をカバーする「世界トップクラスの備蓄」

日本で消費される原油の約95%は中東産であり、そのほとんどがホルムズ海峡を通過して運ばれてきます。つまり、海峡が封鎖されれば、日本に向かう原油のルートは「ほぼゼロ」になります。

これだけ聞くと絶望的に思えますが、実は過度にパニックになる必要はありません。

日本には、過去のオイルショックの反省から構築された「約240日分(およそ8ヶ月分)」という世界トップクラスの石油備蓄(国家備蓄+民間備蓄)が存在するからです。


  • 影響の現れ方

    が長期間封鎖されても、明日から突然トラックの軽油がなくなったり、ガソリンスタンドが空になったりすることはありません。備蓄を取り崩しながら、時間をかけて代替ルート(アメリカ産など)への切り替えを進める猶予があります。


  • 物流・ビジネスへの打撃

    モノは確保できても、原油価格の高騰は避けられません。

    トラックの燃料代(燃料サーチャージの上昇)はもちろん、プラスチック製品、タイヤ、さらにはパレットに巻くストレッチフィルムなどの梱包資材・石油化学製品のじわじわと上昇していくことになります。


【LNG(液化天然ガス)】

中東依存度は低いが、「在庫が持てない」という最大の弱点

一方で、家庭の都市ガスや、電力会社が電気を作るための主要な燃料となっているのがLNGです。 日本のLNG輸入先は、オーストラリア(約4割)をはじめ、マレーシア、アメリカなどが中心であり、ホルムズ海峡を通過するカタールやUAE産は全体の1割〜2割程度に留まります。


「ホルムズ海峡を通らないなら安心」と思われるかもしれませんが

実はLNGのほうが短期的な危機に陥りやすい構造を持っています。


  • 長期保存ができない

    LNGはマイナス162度という超低温で液化状態を保つ必要があり、原油のように巨大なタンクに入れて何ヶ月も放置することができません。

    そのため、国内の在庫は常に「2〜3週間分」しか持っていないのが実情です。


  • 物流・ビジネスへの打撃

    中東からの1〜2割の供給が途絶えると、日本だけでなくヨーロッパやアジア諸国も一斉にパニックになり、オーストラリアやアメリカのLNGを奪い合う「猛烈な買い付け合戦」が始まります。 在庫が持てないため、高くても買わざるを得ず、結果として「電気代・ガス代の異常な高騰」に直結します。 また、LNG船は専用船であり、数が限られているということもあります。 その運航をする乗組員も特殊スキルが必要です。


まとめると、、、

  1. 原油(石油)

    モノはすぐには無くならないが、数ヶ月遅れて「あらゆるモノの輸送コスト・原材料コスト」が上昇する。


  2. LNG(天然ガス)

    モノはゼロにはならないが、世界的な争奪戦により、数週間以内に「電気代・ガス代」が跳ね上がるかもしれない。


4.今後の見通し

現在は「有事の入り口」に立った段階です。

まずは直近3週間の「在庫到着期間」の間に、事態が外交的に沈静化するのか、それとも長期化するのかを見極める必要があります。

当社としても、最新の国際情勢と海運マーケットの動向を注視し、お客様へ情報発信と最適な提案を続けてまいります。


本件をまとめたレポートがご入用の方は担当営業までご連絡をいただければと思います。


山口物流株式会社

GM 小坂

 
 
bottom of page